6月11日に桶川で発生したスカイダイビング死亡事故に関して

 

「(6月)11日午前10時20分ごろ、埼玉県桶川市川田谷の麦畑に、スカイダイビングをしていた横浜市の男性会社員(46)が不時着し、心肺停止状態で病院に搬送された。男性は(中略)落下中に意識を失ったとみられるという。男性に骨折など目立った外傷はなく、同署(県警上尾署)では病死の可能性があるとみて、司法解剖して死因を調べる方針。男性は同県川島町の「東京スカイダイビングクラブ」のスクール生。午前10時すぎ、現場近くの荒川河川敷にあるホンダエアポートから、他のスクール生らと一緒に飛行機に搭乗、単独で降下した。男性はこの日が3回目のスカイダイビングで、男性インストラクターの指導を受けていた。」
(2017年6月12日01時29分朝日デジタル記事より抜粋)
私はこの事故に関して、現場で見ていたジャンパーから次のように聞いている。「本田航空の空港管理下にあるランウェイから約1㎞南に、レベル3(初心者教育課程において3回目のスカイダイビング)のスチューデントのパラシュートがスピンをしていた状況で降下した。」 
私が本田航空から電話で聞いた話では、「スチューデントは空中で死亡していると、東京スカイダイビングクラブから聞いている。」とのことであった。しかし、東京スカイダイビングクラブによると、「スチューデントは両サイドのインストラクターからリリースされた状態で、地面に背中を向けてフリーフォールして、自分自身でリップコードを引き、パラシュートを開いた。」とのことだった。
通常インストラクターは、スチューデントの安全に対し責任を負う技術を有する。インストラクターはスチューデントを保持して安全にパラシュートを開かせるか、又は、インストラクター自身が、スチューデントのパラシュートを開かなければならない。
今回の事故に関して、私の伝えたいことの1つ目は、スチューデントを補助できるレベルではない者を、スチューデントの教育に参加させてしまったことである。 

フリーフォールとは、航空機を飛び出てからパラシュートを開くまでの間のことである。 AFF(初心者教育課程の一種)では、背中を上に向けた状態でスチューデントにフリーフォールさせる。背中にパラシュートをつけているためである。地面に背を向けた状態でパラシュートを開くことは、非常に危険を伴う。スチューデントが地面に背中を向けた状態になる可能性は、主に2つの要因が考えられる。

1:インストラクターの見識として、“ニュートラルポジション(安定した姿勢)の基本とは何か”が、わからないのなら、スチューデントをリリースしてはならない。なぜなら、ニュートラルポジションが取れないスチューデントは、背面でフリーフォールするかもしれないからだ。

2: AFFで航空機から飛び出す場合、インストラクターは、もしもタイミングが合わなかった場合でも、スチューデントの体勢を保持する技量を有していなければならない。スチューデントがニュートラルのポジションを取れていない場合は、スチューデントは簡単に体勢を崩して、背面でフリーフォールする状況になると考えられるからだ。そして、インストラクターの資質としては不向きな人間性の者が、インストラクターであることもある。
2つ目に伝えたいことは、この事故の発生前の様子を空中で撮影した動画の存在についてである。AFFの資格を保有しているインストラクターは通常、ヘルメットにビデオカメラをつけて飛んでいる。それは、ジャンプ中のスチューデントの様子を撮影し、ジャンプ後にスチューデントに見せることを目的としている。

6月17日、6月22日と2回にわたり、Yインストラクターは東京スカイダイビングクラブに事故当時の動画を見せてもらいたいとメールで問い合わせた。しかし、何の返事もなかったとYインストラクターから聞いている。
本田航空と東京スカイダイビングクラブは、それぞれ、正確に情報公開をした事がない会社であり、団体である。正確な情報・検証、及びインストラクターの高い資質と技量の保持は、安全性を高める上での重要な要素である。

これらのことを警告したいと、私は考えている。

  藤原誠之   スカイダイブ藤岡 事務局

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