To fly by yourself

地上講習テキスト

A.F.F.(アクセルレイテッド・フリーフォール)

ケネス・F・コールマン・ジュニア AFF教練の開発者は、ケネス・F・コールマン・ジュニア氏である。彼のスカイダイビング人生は、1970年代に急激な進展を遂げた。 1969年、彼はミシガン州のカラマズーにあるクラブでスカイダイビング界に足を踏み入れた。1973年、彼は教え子たち3人と大会出場をめざし、4Way-RWのチーム“レインボー・フライヤーズ”を作った。 チームは1974年,1976年と国内選手権や、ワールドカップで優秀な成績を収めた。1975年、彼らは初のRW選手権で、4Wayのゴールドメダルを獲得した。同年、全米選手権でも勝利を手にした。 勝利者としてその地位を保有している三年の間に、コールマン氏とチームの面々は、DZ(ドロップゾーン=スカイダイビング場)を開き、自分たち練習と同時に初心者の育成にも努めた。 その後、コールマン氏はパラシュート業界で生計をたて始めた。スチューデント・トレーナー・タンデム(ピギー・パック)の開発をした会社(2社)に在籍し、数々の開発分野に貢献した。そしてその頃、彼はスカイダイビングのテクニック増進に大いに役立つ新しい初降下練習用プログラムを開発しなくてはならないと考えた。 プログラム作成に着手して間もなく、コールマン氏はUSPA(United States Parachute Association)の取締役陣から、「全ての研修生はスタティックラインジャンプを最低5回はしなくてはならない。」という規定の特殊ケースにおける免除を得た。 そして1980年の終わりには、Gary Dupuis,Hoot Gibson,Rocky Evans,T.K.Donle,Charlie Kinlin,John Robbins 等の協力により、アクセルレイテッド・フリーフォール・プログラム(AFF)が完成した。このプログラムにおけるインストラクターやジャンプマスターの育成は従来の様な通信教育では不可能であった。規格化されたコースを終え、資格を与えなければならない。しこでコールマン氏は、UPSAによる依頼のもと、全米の各DZ(ドロップゾーン=スカイダイビング場)をまわり、AFFによるインストラクターとジャンプマスターの育成をはかり、DZ自体をも指導し、このプログラムの普及と、その浸透に努めた。 1981年 8月、コールマン氏は気球の事故でこの世を去った。しかし、このAFFプログラムは生き残った。彼の熱意と情熱は多くの人々を十分に感動させたと共に全米だけでなく世界中のスカイダイバー育成に多大なる貢献を果たしたのである。

A.F.F.システムの概要

AFFシステムは次のようになっています。まず、地上講習を受け、実際のスカイダイビングに必要な事柄を学んでいただきます。地上講習の内容を理解し、実践できるようになってからスカイダイビングをします。実際のスカイダイビングはレベル I ~レベル VII の7段階があり、それぞれのレベルの習得目標が設定されております。その目標をクリアしたら、次のレベルに進む様になっています。その判断はジャンプマスター(インストラクター)に委ねられます。レベル I,II,III は2人のジャンプマスターと一緒にスカイダイビングをします。レベル IV,V,VI,VII は1人のジャンプマスターとマンツーマンでスカイダイビングをします。レベルVIIをクリアしたスチューデント(スチューデント・オフ)は1人(ソロ)でのスカイダイビングが可能になります。最低7回で、単独でスカイダイビングが出来るこのAFFシステムの利点は、スチューデントがスカイダイビングをしながら空中で指導を受けられるところに特徴があります。その為、スチューデントは次の条件のもとでスカイダイビングを行います。多くの事を短い時間と数少ない回数で学ぶ事が出来、必要とあればその都度、援護が成されます。パラシュートのオープニングやパラシュートコントロールでの問題、不安等も非常に少なくてすみます。
  • スカイダイビングは航空法第90条と施行規則196条の3の適用を受ける航空活動ですので、当然スチューデントもこれらの法律に従います。協会の規定する健康診断を受け、結果が適当と認められることが必要です。又、スカイダイビング団体保険にも加入します。
  • 装備については、スチューデント用に設計、製造されたFAA-TSO-23Cの基準にかなったものを使用します。
  • 中身の濃いシステムの為、AFFでのスカイダイビングは1日につき3回が限度です。また地上から 9,000ft 以上の高度がとれる場合にのみ実施できます。フリーフォールの時間が長く取れることがAFFシステムの性質上、必要となるわけです。 パラシュートは風の影響を直接受けるので、安全上、風速 7m/s未満の時に実施します。

A.F.F.の訓練方法

この方式は、真剣にスカイダイバーになりたいスチューデントに個人的指導をほどこす為のものです。また、一回だけのスカイダイビングを体験したいと思うスチューデントにとっても、良い機会を与えるものです。 このプログラムは注意深く、そして系統だてて開発してあります。その指導は技術だけではなく、装備にまでおよび、これまでは、“習うより慣れろ”でしか広げることの出来なかったスカイダイビングの習得に役立ちます。
A.F.F.方式は、次の3つの概念によって成り立っています。
  • スカイダイビングに先立つ訓練から、フリーフォール中もハーネスを握っておく方法によってジャンプマスターによる直接指導が行えること。
  • 理論的な上達システムによって情報が提供され、技術が開発されること。
  • 最新式の装備と技術を使用することによる恩師を最大限に受けられること。
「アクセルレイテッド・フリーフォール」と呼ばれる理由は、今までのスタティックラインから始めるプログラムに比べ、3~5倍の速さで教習期間が終了するためです。
今までの方法
  • 今までのスカイダイビングの手始めはスタティックラインでのパラシュートジャンプがなされてきました。このジャンプは飛行機からの飛び出し(EXIT)を経験することと。正しい降下姿勢を学ぶことでした。
  • b. 3回目のスタティックラインジャンプまでにスチューデントはリップコードを引く練習を始め、その後3回のジャンプでリップコードを引く練習が正しく行われたと確認されたなら、次のステップに進むことが許されます。
  • c. その後、3秒内でのリップコードプル、5秒、10秒とその降下時間を延ばしてゆく間に、スチューデントは正しい降下姿勢と正しいEXITを学び身に付けます。この時スチューデントは降下という危険に身をさらすことが知覚機能に与える負担の大きさが普通でないことを認識し、自覚しなければなりません。それは知覚神経を大きく歪めているのです。
  • d. スチューデントは、15秒、20秒、30秒と独自のフリーフォール時間を増やしながら、各々の基本を学び自身の安全を確保することを目的としている。
以上、修得課程の間たいていのスチューデントはずっと孤独と恐怖を味わい続けます。
A.F.F.の方法
  • A.F.F.で、スチューデントは直接指導の下、充分な時間を費やして、体の安定というものを学びます。スチューデントはやはり知覚系の負担を経験しますが、それを圧倒できるチャンスが与えられます。これにはたいてい5秒しかかかりません。その後、リップコードを引く練習を3回行い、最後に実際にリップコードを引きます。
  • 以上必要とあらば、その都度援護が成されます。多くのことを短い時間と数少ないスカイダイビングで学ぶことができ、パラシュートのオープニングや着地での問題、不安等も非常に少なくてすみます。
  • スチューデントはその7段階の過程を自分のペースで学び、進むことが出来ます。
  • 安全性,自己操縦を含めたエグジェット(EXIT=飛行機から飛び出すこと)やフリーフォールに必要な技術は、徹底的な地上訓練と空中での直接指導により身につけられてゆきます。
  • ヘディング(方向を定めること),ターン(方向変換),バックループ(後転),トラック(水平に前進すること)を7過程の間に学び、必要とされる自分自身の管理が出来るようになります。
    また、RW(リラティブワーク)での安全確認の方法、1人の時と他のスカイダイバーと一緒の時等、それぞれの対処の仕方を学びます。
以上のように、空中で直接インストラクターにより指導が受けられる為、安全性に優れ、上達が早く、短時間でスカイダイビングが習得出来るわけです。

スカイダイビング全般について

スカイダイビングを簡単に説明すると、飛行機から飛び出し(EXITという)、ある時間フリーフォール(自由落下)したのち、パラシュート(キャノピーという)をオープンさせ地上へ降りることとなります。  通常日本の場合、12,500ft(約3,700m)より降下し、地上2,000ft(約600m)以上でパラシュートをオープンさせています。この最低オープン高度は、各ライセンスによって異なり、A.F.F.スチューデントは、3,000ft(約900m)以上でオープンすることになっています。
フリーフォール中の速度
落下速度は、EXITする時の“0”から加速し、EXIT後約12秒で最大スピードに達し、そして地上に近づくに従い空気密着が増し序々に減速する。
フリーフォール中の姿勢や、ジャンプスーツ、気象状況にもよりますが、一般的には時速約 200km/hで落下し、1,000ft落下するのに約5.5秒かかります。
パラシュートをオープンさせてから地上に着地するまではだいたい4~5分の時間がかかります。
フリーフォール中のコミュニケーション
2人以上でスカイダイビングをする場合(A.F.F.にもこれにあたる)は、互いにコミュニケーションをとる必要があります。空中では音声によるコミュニケーションがとれないので、アイコンタクト(目で見ること)という手段を使います。
目で見ることの意味は、その時の状況(対象)の変化に対応すると言うことです。ただ見ているだけでは、本を開いていても読んでいないのと同じで意味がありません。A.F.F.では、ハンドルシグナル(手信号)をコミュニケーションのひとつとして使います。数種類のハンドシグナルでジャンプマスターから指示を受けます。
スカイダイビングの体に対する影響
  • 空気は地上から離れるに従って、薄くなります。気圧と気温も下がります。各国の航空法では酸素補給なしで、人体に支障のない最高高度が12,500ftの為、通常この高度からEXITしています。
  • フリーフォール中は時速 約200km/hで落下しますが、風圧によって息ができないことはありあせん。
  • フリーフォールは短時間で気圧が変化します。これが鼓膜に影響し、耳がつまったような感じになる場合があります。パラシュートがオープンしてから、耳抜き(唾を飲み込む等)をすれば直ります。
  • パラシュートがオープンする時にはショック(オープンショック)通常2Gから3Gがかかりますが、装備を正しく付けていればオープンショックで怪我をする事はありません。
スカイダイビングの危険性
スカイダイビングは危険な要素を含むスポーツであることを認識する必要があります。現在のスカイダイビングは以前より装備、教育レベルはかなり向上し、安全性は増したものの、絶対ではありません。人間は高い知能を持っていると言われていますが、その頭脳が間違った選択をする場合がある事を自覚する必要があります。
スカイダイビングで最終的な責任を負うのは、その個人であることを理解して下さい。
優先
フリーフォール中もパラシュートがオープンしてからも下にいる人が優先します。上にいる人は下の人の行動を妨げてはなりません。
選択の自由
スカイダイビングは、精神的なものの影響を強く受けるスポーツ(メンタルスポーツ)です。強制されてするものではなく、いかなる場合でも選択の自由があります。

パラシュートオープン図とコンテナ図

スカイダイビングで使用するパラシュートが予備を含めて2つこのコンテナの中に畳まれています。AAD(自動作動装置)も装備されています。
パラシュートオープン図
コンテナ背面 コンテナ全面 コンテナとライザー
Go Top
Go Top