To fly by yourself

一人で飛ぶために

非常事態の対応

近年のスカイダイビングは、装備の改善、性能の向上と教育システムの確立等で安全性は増したものの、完全なものではありません。スカイダイバーをとりまく環境はたえず変化しており、非常事態が起こる可能性は十分にあります。ここでは、将来起こりうる非常事態に対し、過去の経験から導かれたその対処方法を学びます。
非常事態は大きく3つに分けることができます。
  • 飛行機の非常事態(エアクラフト・エマージェンシー)
  • フリーフォール中の非常事態(フリーフォール・エマージェンシー)
  • 着地時の非常事態(ランディング・エマージェンシー)
その他、パラシュート同士の接触、衝突(コリジョン)があります。

(1)飛行機の非常事態(エアクラフト・エマージェンシー)

ここで重要なことは、常にジャンプマスターに注目し、その指示に従う事です。ジャンプマスターとパイロットはコミュニケーションをとり、対処の仕方を判断しスチューデント(他のジャンパー)に指示します。一刻を争う場合が多いので、ジャンプマスターに注目してください。
飛行機の故障(トラブル)
  • 1,500ft未満(クラッシュポジション)
    緊急着陸の姿勢をとる。
    高度1.500ft未満では、飛行機から飛び出してもパラシュートがオープンする高度が十分にないため、クラッシュポジションをとる。
  • 1,500ft~3,000ft(ベイルアウト)
    両手でリザーブ・リップコードを握る。
    ジャンプマスターの指示で、足を閉じて飛び出す。
    “ワンサウザン”“トゥーサウザン”“スリーサウザン”でブル・アーチ、チェック。
  • 3,000ft以上(ポイズド・イグジェット)
    通常のEXITをする。
    レベル III までのスチューデントはジャンプマスターがプルする。
    レベル IV 以降のスチューデントはプルのサインによりスチューデントがプルする。
その他、パラシュート同士の接触、衝突(コリジョン)があります。
  • 飛行機内でパラシュートが出た場合
    手で被い、外に出て行かないようにする。
    ジャンプマスターにすぐ伝える。
  • パラシュートが飛行機の外に出た場合
    パラシュートに続いて、すぐに飛び出す。
    パラシュートをチェックし、カッタウェイに備える。
  • パラシュートが飛行機に引っ掛かった場合
    カッタウェイしてリザーブを使う。
  • 自分やその他のジャンパーのパラシュートやパイロットシュートが出ている等の異常に気付いたら、すぐにジャンプマスターに伝える。

(2)フリーフォール中の非常事態(フリーフォール・エマージェント)

  • フリーフォール中にジャンプマスターの一人がいなくなった場合
    アーチしてもう1人のジャンプマスターの指示に従う。
  • フリーフォール中にジャンプマスターが2人ともいなくなった場合
    アーチしてすぐにプルする。(ルック、リーチ、プル)
  • フリーフォール中にジャンプマスターから“プル”のサインが出たら、すぐにプルする。(ルック、リーチ、プル)
その他、パラシュート同士の接触、衝突(コリジョン)があります。

(3)着地時の非常事態(ランディング・エマージェンシー)

ランディング時の非常事態です。心しなければならないのは、
  • 木や林
  • 池や川
  • 電線
  • 障害物
などにランディングしなければならない時です。 これらは基本的に避けるべきものなのですが、どうしても避けることができない場合は次のように対処して下さい。
飛行機の故障(トラブル)
  • 木や林にランディングしなければならない時(ツリー・ランディング)
    パラシュートを風上に向ける。
    足を閉じて、衝突する前にフレアをかける。
    腰まで引いた手(フレアをかけた手)で脇をしめ、顔面を守る。
    衝突後、落ち着いたら太い幹があればしがみつき、助けを待つ。
  • 池や川などにランディングしなければならない時(ウォーター・ランディング)
    水に浸かった後、溺れない為に空中で、パラシュートを風上に向ける。
    胸帯をはずす。
    股帯をゆるめる。(外さないこと)
    足を閉じて水面を地面に見立ててフレアをかける。(水深は分からないのでP.L.F.をする)
    両肩をハーネスから抜け出し、パラシュートの横へ出る。(ラインにからまないようにする)
    川などで流れがあり、立てる深さであれば、川下へ回り、パラシュートに引きずられないようにする。
    ※事故の多くは溺死によるものである。
  • 電線に衝突する時(ワイヤーランディング)
    障害物の中で最も避けるべきものです。電線は見えにくいので電柱や鉄塔を見て判断する。
    メインリップコードを捨てる。
    足を閉じて衝突する前にフレアをかける。
    宙づりになったら、2本以上の電線に触らず、P.L.F.に備え救助を待つ。
    決してカッタウェイしないことと、他人に自分の体を触らせない。
    地面に足がついていたら、ハーネスから抜け出る。パラシュートは回収しない。
    (回収は電力会社に任せる)
  • その他の傷害物
    家などの建物
    車等
ランディングに障害となるものは避ける
★アウト・ジャンプ(アウト・ランディング) ドロップゾーン(DZ)以外の場所にランディングすることです。原因として、パラシュートコントロールの失敗やスポッティングの失敗、ロープル(オープン高度が低い時)などがあります。 又、エアクラフト・エマージェンシーでEXITした場合は、ほとんどがアウト・ジャンプになります。 前に説明した着地時の非常事態(ランディング・エマージェンシー)のほとんどが、アウト・ジャンプした時に遭遇します。DZの危険な箇所はあらかじめ知ることができますが、見たことのない場所では、どこが安全なのか危険なのかは分かりません。アウト・ジャンプは危険な要素が多いということを、覚えておいて下さい。 アウト・ジャンプになると判断した時は、高度があるうちにランディング場所とファイナル・アプローチの方向を決めます。
対処法 とにかく広い場所を早めに選び、障害物の有無を見る。
例えば)
畑などの耕作地
運動場などの広場
風向きを調べ(煙、水面のさざ波などが参考になる)ランディングプランを立てる。
道路は車が走っていたり、脇には棚や電柱があったりすることが多いので注意する。
自分より先にランディングした人を参考にするとよい。
ランディングしたら人目につく所へ出て、合図を送る。
  • 欲を出して少しでもDZに近づこうとして、危険な場所に降りるはめにならないようにする。多少遠くても、けがをするよりはましである。
  • 安全を保つ為には、高い高度においての故障(トラブル)に対する判断が重要です。

パラシュートの非常事態(マルファンクション)

キャノピー(パラシュート)マルファンクションは、メインリップコードをプルできたか、できないかで2種類に分けており、その対処の仕方は違います。
1.トータル・マルファンクション
メインリップコードがプルできない状態です。フリーフォールのスピードそのままで落下する為、素早く対処しなければなりません。 対処法:リザーブリップコードをプルする。
  • 足を閉じる。
  • ルック・・・リザーブリップコードを見る。
  • リーチ・・・両手でリザーブリップコードを握る。(左手の親指をリップコードに入れ、右手はそれを被う)
  • プル・・・両手のひじが伸び切るまで、確実に引く。(ブルしたらリップコードを捨てる)
  • アーチ
  • チェック・・・肩越しにパイロットシュートが出て行くのを確認する。
★メインリップコードが固い時(ハード・プル)
・両手で2回トライする。
 プルできた時  → 通常の動作を続ける
 プルできない時 → リザーブリップコードをプルする
★メインリップコードがポケットから外れている時(フローティング・リップコード)
・メインリップコードのワイヤーが通っているハウジングをハーネスからたどり、ワイヤーをつかんでプルする。
・リップコードのハンドルは風圧で動いているので、ハンドルをつかみにいかず、根本からワイヤーをつかむようにする。
 プルできた時  → 通常の動作を続ける
 2回トライしてプルできない時 → リザーブリップコードをプルする(5秒以上トライしない)
2.パーシャル・マルファンクション
通常、メインリップコードをプルしてから5つカウント(約5秒)する間に、パラシュートはオープンします。5つカウントしても、部分的なトラブルで正常にパラシュートがオープンしていない状態がパーシャルマルファンクションです。 対処法:メインパラシュートをカッタウェイしてリザーブリップコードをプルする。
  • メインリップコードを捨てる。
  • メルック・・・カッタウェイハンドル(パッド)を見る。同時に足を閉じる。
  • メリーチ・・・両手でカッタウェイハンドルを握る。
  • メプル・・・両手でカッタウェイハンドルを確実に引く。
  • メルック・・・リザーブリップコードを見る。
  • メリーチ・・・両手でリザーブリップコードを握る。(左手の親指をリップコードに入れ、右手はそれを被う。)
  • メプル・・・両手でリザーブリップコードを確実に引く。
  • メアーチ
  • メチェック・・・肩越しにパイロットシュートが出てゆくのを確認する。
★パーシャルマルファンクションは様々なタイプがありますが、重要なことは、オープンしているか? コントロールができるか? など、このパラシュートで安全に降りられるかどうかを判断することです。 ★パイロットシュートやブライダルコードが体(手、足)に巻き付いた時
(ホース・シュー)
巻き付いた部分を振りほどくようにする。
2回トライして(5秒以上トライしない)巻き付いたままなら、カッタウェイしてリザーブリップコードをプルする。

P.L.F.(Parachute Landing Fall)

日本語で言うと五接地転倒です。通常のスタンドアップランディング(ランディングで立つこと)が困難なときに行います。
P.L.F.
例)
  • フレアの最中に体が横へ振られた時(大抵の人は片足を地面につこうとして足を捻ったりすることが多い)
  • 強いフォローの風(追い風)でランディングする時(追い風ではパラシュートの速度が速く、フレアで水平方向のスピードが殺しにくい為)
  • 丸型(ラウンド)パラシュートを使う場合(ラウンドパラシュートはフレアをかけずにP.L.F.が基本)
  • ハードランディング(ソフトにランディングができない)が想定される時(手をついたりして止めようとするより、転がった方がよい場合が多い)
P.L.F.は以下の要領で行います。
足を閉じ、ひざをリラックスさせる。
(1)かかとが接地したら、体の進んでいる方向と反対へ体を捻り続けながら
(2)ふくらはぎ →(3)もも →(4)尻 →(5)背中
の順で接地してゆき、着地のショックを分散します。このひじは張らないようにします。

マイナープロブレム(Minor Problem)

通常よく起こる状態(問題)です。これはマルファンクションではありませんが、正しい判断と対処法が要求されます。オープンしてから10秒位はパラシュートをチェックして下さい。
エンドセル・クローズ(Closed End Cells)
左右の外側のセルが十分に空気をはらんでおらず、エンドセルがつぶれている状態。 対処法
  • 両方のトグルをシェイクすることで直ります。
※シェイクを繰り返しても直らず。ターンが加速してゆくようであれば、カッタウェイしリザーブを使う。
スライダー・アップ(Slider Up)
スライダーがライザーまで降りず、サスペンションラインの途中で止まっている状態。 対処法
  • 両方のトグルをシェイクすることで直ります。(下へ降りてきます)両
※スライダーが上のほうにあるということは、パラシュートが完全に広がっておらず、沈下スピードが早い為、そのままではハードランディングになる。ライザーから20~30cm上にある分には問題ない。
ライン・ツイスト(Twisted Line)
サスペンションライン、コントロールラインがひとまとめにねじれている状態。 対処法
  • 左右のライザーを持ち、自転車を漕ぐように捻じれているのと反対に体を捻って直します。
  • ラインツイストしている時はスライダー・アップを伴っています。
※ラインツイストを直してからトグルは解除する。なかなか直らないときは、高度計を確認し 2,500ftの段階でもうすぐ直るかを判断し、時間がかかりそうならカッタウェイしリザーブを使う。
ライン切れ(Broken Line)
サスペンションラインが切れている状態の対処法
  • サスペンションラインは切れても1本か2本で全部切れることはありません。
  • パラシュートが四角くオープンして、スピンしていなければ、コントロール・チェック(右ターン、左ターン、フレア)
できる場合 → そのパラシュートで降りる。
できない場合 → カッタウェイしてリザーブパラシュートを使う。

コントロールラインが切れている状態の対処法
  • コントロールラインが両方切れていれば、両方のリアライザーでコントロールします。。
  • 片方切れていたら、オープン時にトグルは半分位引いた状態(ハーフ・ブレーキ)にセットされているので、切れていないラインの方へターンが始まります。
  • 切れてないラインのトグルを解除して、両方のリアライザーでコントロールします。
パラシュートのダメージ(Damage)
パラシュートが四角くオープンして、スピンしていない時(マルファンクションでない時)にパラシュートが敗れている状態。 対処法
  • コントロール・チェック(右ターン、左ターン、フレア)
できる場合 → そのパラシュートで降りる。
できない場合 → カッタウェイしてリザーブを使う

ボースオープン

メインパラシュートーとリザーブパラシュートの両方がオープンしてしまった状態。
対処法
  • まず、落ち着く(パラシュートが2つ開いているので、とてもゆっくり沈下する)
  • リザーブスタティックラインを外す。
    両方又は片方のリザーブスタティックラインを外す。
    カッタウェイをする状況が起こったとき、リザーブスタティックラインは障害になる。
  • パラシュートの状態を確認し、判断する
    • バイ・プレーンの場合
      メインパラシュートとリザーブパラシュートが前後に並んでいる状態
      ・トグルは解除しない。
      ・リア側のライザーを使用してゆっくりコントロールする。
      (急激な操作はしない)
    • サイド・バイ・サイドの場合
      メインパラシュートとリザーブパラシュートが左右に並んでいる状態
      ・トグルは解除しない。
      ・リア側のライザーを使用してゆっくりコントロールする。
      (急激な操作はしない)
    • ダウン・プレーンの場合
      メインパラシュートとリザーブパラシュートが離れていて、下向きに急降下している状態
      ・トグルは解除しない。
      ・メインパラシュートをカッタウェイする。
      (左右のライザーにコネクトされている両方又は片方のリザーブスタティックラインを外した後)
      ・リザーブパラシュートをコントロールする。

キャノピーコリジョン

コリジョン(パラシュート同士の接触、衝突) パラシュートはフルグライトの時、約30~50km/hのスピードで前進します。2つのパラシュートが向き合った場合は、かなりのスピードで近づき、衝突した場合は大きなショックがあります。パラシュート同志の接触は必ず避けるように他のパラシュートに注意してください。
対処法
  • パラシュートが向き合った時
    → 互いに右へよける。
  • パラシュートが正面以外から接近した時
    → ぶつからない方へよける。
  • 衝突が避けられない時
    → 体を大の字に広げ、相手のラインをくぐらないようにする。
  • パラシュート同志がからまった時
    → 相談してカッタウェイする。カッタウェイする高度が少なく、1つのパラシュートがオープンしていれば、2人で1つのパラシュートで降りる。(あせってカッタウェイすることはよくない。)
Go Top